映画くれなずめの感想ちょこっと

映画くれなずめを観てきました。
ほぼ前情報なしに観に行ったんですが思いの外刺さってしまったので思いつくままに感想を書きます。

なんていうか、「死んだら人は思い出の中でしか生きられないけど、思い出になった次点で記憶は美化されちゃうしどうでもよかったはずのことが特別になっちゃうし既にそれは私の思い出でありその人ではない」みたいな映画でしたね……?
作中終盤の「お前ウルフルズ好きだったろ?」「まあ、好きだけど……好きなうちの一つって感じ」のやり取りがもの悲しかった。そう、本人にとってはそんな感じだけど、遺された人間としてはどうでもいいやり取りが妙に記憶に残っていていつの間にか特別なことのように思ってしまってる。そういうところでやっぱりもう自分たちは進む時間が違ってるんだよなということを突きつけられて悲しい。いつまでも一緒にバカやってたいのにね。

あと、最後のやり直しがとても悲しくて優しかったですね。「次は絶対に電話に出るから、」と彼は言っていたけど、たとえあの時電話に出ていたとしても何も変わらないんですよ。電話に出ていたとしても友人が亡くなる事実は変わらないし、きっと翌朝普通に仙台に帰る友人を見送っていただろうと思う。
でも、何も変わらないけどそれでもやり直したいと思う気持ちが痛いほど分かってしまうので悲しかった。
もし、もしも友人が亡くなることが分かっていれば、ちゃんと別れの挨拶をしたのに。あんなに適当に「また」の言葉を言わなかったのに。そう思うだろうなあって気持ちはとても分かる。
最後彼らはやり直しをしていたけれど、かける言葉はあの時を全く一緒だった。けれどそれでよかったんだよね。変わらないけど、それでも「また」の言葉をちゃんと言いたかったという遺された側の気持ちを映画で叶えてくれるのが優しいなあと思いました。

後半の急なチープな展開もよかった。中盤の「シリアスがそんなに高尚かって、コメディ舐めてんのか」の台詞があったから監督に絶対的信頼を置いてしまった。
「友人の死」という重いテーマを描いておきながら後半急にコメディ描写が入るのとても好き。人の死をずっとしんみりと重々しく描いていれば死に対して誠実なのかと言われれば「コメディ舐めんな」ってそりゃ言いたくなるでしょうよ。
友達は友達で変わりないはずなのに、死んでしまった途端に友達という枠が特別な別のものに変わってしまうの嫌だもんね~~ずっと友達でいたいよ、お菓子もらうために会いに来たわけじゃないんだよ本当。友人が死んだら死んだという事実があるだけで、友人であることは変わらないもんね。

まあ現実はそんな簡単に割りきれるものじゃないけどさ~~それでもさ~~やっぱり特別なものになってほしくないしずっと友達でいたいじゃん……
くれなずめというタイトルなのに暮れないまま終わるの、そんな祈りを肯定してくれるような製作側の優しさを感じます。ありがとう。
公式サイトの「友達に会いに来てください」という監督の言葉もいいよね。いい映画でした。